大紀元時報

武漢研究所責任者、論文でバイオセーフティに懸念示す コロナ感染発生前

2021年7月22日 15時44分
武漢ウイルス研究所。2020年4月17日撮影(Photo by HECTOR RETAMAL/AFP via Getty Images)
武漢ウイルス研究所。2020年4月17日撮影(Photo by HECTOR RETAMAL/AFP via Getty Images)

武漢ウイルス研究所の責任者は中共ウイルス(新型コロナ)が発生する前に、同研究所でバイオセーフティを強化する措置を取る必要があると警告した。また、公開された電子メールの情報では、同責任者は2016年、米国に対して同研究所内と研究員が使う密閉型防護服を消毒するよう要請した。

「実験室は危機的な状況にある」

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)21日の報道によると、武漢国家生物安全実験室主任で中国科学院武漢ウイルス研究所研究員の袁志明氏は、自身が2019年9月に発表した論文の中で、「実験室のバイオセーフティは危機的な状況にある」と警告した。

同論文は、2019年5月と9月に2回の修正を経て、9月に袁志明氏が共同編集者を務める英文学術誌「Journal of Biosafety and Biosecurity(バイオセーフティ及びバイオセキュリティ誌)」で発表した。論文のタイトルは『中国ハイレベルのバイオセーフティの現状及び将来の挑戦』。袁氏は、実験室のバイオセーフティが危機的な状況にある原因について、「資金源、従属関係、管理体制が違うため、これらの実験室は(バイオセーフティに関する条例の)実施をめぐって、基準に達し、協力プロジェクトの流れにおいて困難に直面している」と説明した。

VOAによれば、袁志明氏は研究者出身の管理監督幹部である。欧米の研究機関で長く研究活動を行った経験を持つ袁氏は、ハイレベルのバイオセーフティ実験室の建設コストが高いだけでなく、維持コストが莫大であることを理解している。

しかし、武漢ウイルス研究所について、袁氏は論文の中で、「維持コストは無視されている。高いバイオセーフティレベルの実験室(BSL)の一部は、毎日必要とされる重要なプロセスに費やす十分な運営資金がない。資源が限られているため、バイオセーフティレベル3(P3)の実験室の中に、最小限のコストで運営しているところや、場合によって全くコストをかけていないところもある」と明らかにした。

袁氏は、中国初のバイオセーフティレベル4(P4)実験室の主要責任者である。同氏は同実験室の建設段階で、プロジェクトの総監督を務めた。プロジェクトが完了し認証を受けてから、同実験室の主任を務めている。

同氏は論文の中で、武漢ウイルス研究所の実験室の現状では、「バイオセーフティ上のリスク」を「早期発見できない」と懸念した。

「現在、大多数の実験室では、専門のバイオセーフティ管理者とエンジニアが不足している。研究員がこれらの業務を兼任しているため、施設や設備の運用における潜在的なリスクを迅速に発見し、軽減することが困難になっている」

しかし、中共ウイルスが武漢ウイルス研究所から漏えいしたと指摘する声が高まっている現在、袁氏は研究所のハイレベルな実験室について、「現在稼働している欧米の研究施設と同じ水準だ。同時に、バイオセーフティとその技術を持つ科学管理者とサポートスタッフがいる」とこれまでの論調を変えた。

米ラトガーズ大学(Rutgers University)の分子生物学者、リチャード・エブライト(Richard Ebright)氏は、VOAの取材に対して、「(袁氏の論文は)深刻な問題を反映した」「これらの問題は新型コロナウイルスの由来に関わる可能性がある」と語った。

エブライト博士は、中共ウイルスの実験室漏えい説をめぐって昨年、いち早く国際社会に対して独立調査を求めた科学者の一人だ。同氏は今年3月、他の国際的に著名な科学者らとともに、世界保健機関(WHO)に共同書簡を送った。科学者らは、WHOが中国武漢市で行った現地調査は、実験室漏えいという仮説を解明できなかったと指摘した。

同氏は、袁志明氏が指摘した実験室のバイオセーフティの問題は「中国に特有の問題ではなく、世界の多くの国で存在する問題だ。一部の国では、法的拘束力のあるバイオセーフティ法がないからだ」とした。

米NPO団体「バイオサイエンス・リソース・プロジェクト(Bioscience Resource Project)」の共同創設者で遺伝子・ウイルス研究者のジョナサン・ラサム氏は、「明らかに、袁志明氏は自身が管理している実験室のバイオセーフティに関して非常に心配している」と指摘した。

「実験室の漏えい事故は世界各国で起きている。同氏の発言を踏まえると、武漢ウイルス研究所から漏えいしたとしても不思議ではない」とラサム氏は述べた。

電子メール

米ワシントンにあるNPO団体「司法観察(Judicial Watch)」は先週、情報公開法に基づき、米国立衛生研究所(NIH)と武漢ウイルス研究所の間で交わされた301ページに及ぶ電子メールを入手したと発表した。

2016年の電子メールの中には、当時武漢ウイルス研究所の副所長だった袁志明氏が、NIHの職員に対して、同研究所のP4実験室で使われる密閉型防護服と実験室内部を消毒するための消毒剤について協力を求める電子メールが含まれている。

これらの文書によると、NIHが所管する米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)は、ニューヨークに拠点を置くNPO団体「エコヘルス・アライアンス(EcoHealth Alliance)」を通して、コウモリコロナウイルスの研究のために、中国に9つの助成金を提供していた。

電子メールでは、米国側が袁氏の要請を重視していたことが明らかになった。袁氏と連絡していたNIHのウイルス研究者であるジェンズ・クーン(Jens Kuhn)氏が上司に転送した電子メールの中で、2016年の袁氏からの電子メールに「非常に重要」とマークしていた。

いっぽう、袁志明氏は2020年3月20日付の電子メールで、米国で中共ウイルスの感染が爆発的に拡大したことについて、NIHの職員に心を配った。

反論

袁志明氏の論文が公開されてから1年も経たないうちに、同氏は官製メディアの取材に対し、武漢ウイルス研究所のバイオセーフティに対して強い自信を見せた。

2020年4月20日、袁氏は国営中央テレビ(CCTV)傘下の国際放送「CGTN」のインタビューで、「このウイルス(中共ウイルス)は我々のところから流出した可能性は全くない」「我々は厳しい管理制度があり、科学研究を行う規範などがある。これについて我々は自信がある」と述べた。

同年2月16日、米上院のトム・コットン議員は米メディアに対して、中共ウイルスが武漢の実験室から漏えいした可能性を示唆した。議員は「我々は、食品市場から人間の感染症を研究するP4実験室まで、わずか数マイルしか離れていないことを知っている」と話した。

袁志明氏は同年5月26日、再びCGTNのインタビューに応じた。武漢ウイルス研究所について、「開放的で透明性の高い研究所であり、実験室はなおさらそうだ」「我々のこの実験室の物理的な設備と管理水準は、現在稼働している欧米の実験室と同じレベルだ」などと話し、P4実験室は「安全に運営されている。実験室を稼働し始めてから、病原体の漏えいとヒトへの感染は一切ない」とした。

同年4月30日、トランプ大統領は、中共ウイルスが武漢ウイルス研究所から流出した可能性に「確信があり」、証拠を「見た」と述べた。

VOAによると、欧米メディアの中で、英紙メール・オン・サンデーのコラムニストであるイアン・ビレル(Ian Birrell)氏は袁志明氏の論文にいち早く注目した。ビレル氏は2020年6月の記事で、「リスクを考えれば、袁氏が急に自分の研究所に対して自信を持つようになったのは不思議ではない」「袁氏は同研究所の中で、最も地位の高い共産党員である」との見解を示した。

「この感染症がミスや安全性の問題で発生したと証明されれば、袁氏と袁氏の研究所だけでなく、科学に対する人々の信頼を失うという甚大な影響が出る。(中略)世界各国は絶え間なく中国に対して損害賠償を請求する。中国の独裁政権を揺るがし、そして崩壊させるきっかけになるかもしれない」

袁志明氏は2020年12月、中国科学院武漢分院の分党組(党組織支部)副書記に任命された。

(翻訳編集・張哲)

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