中国北京市にある中南海の一角(Mark Schiefelbein-Pool/Getty Images)

中国当局、芸能界への締めつけ強化 業界関係者「狙いは太子党」

中国当局はこのほど、芸能界に対する締めつけを強めた。共産党中央規律検査委員会、党中央サイバーセキュリティ情報化委員会弁公室(中央網信弁)、国家新聞出版広電総局、官製メディアは次々と芸能界を批判した。業界関係者は大紀元の取材に対して、中国当局が芸能界を粛清したのは背後にある太子党勢力を一掃するためだとの見方を示した。

中国のSNS微博(ウェイボー)では8月下旬から、取り締まりを受けた芸能人のニュースが相次いで検索ランキングに上がった。26日夜、日本でも知られている人気女優、趙薇(ヴィッキー・チャオ)は突然、中国当局の禁止令の攻撃を受けた。趙氏が主演を務めたドラマや映画は動画配信サービスから取り下げられた。また、一部の映画関連サイトでは同氏の名前が消え、同氏の作品も削除された。

ほかに、女優の趙麗穎(チャオ・リーイン)のファンから構成したSNS上の複数のチャットグループが当局によって凍結されたことや、台湾人女優の林心如(ルビー・リン)の芸能事務所が法人登録を抹消、人気男性歌手の霍尊の芸能界引退などが報じられた。

党中央規律検査委員会などの規制当局と官製メディアは27~28日まで、次々と評論記事を掲載して、芸能人が「法律や道徳のレッドラインに触れれば」、その芸能活動は「終わるだろう」と主張し、芸能界から追放されることを示唆した。

映画界や出版物、テレビ放送などを統括する国家新聞出版広電総局は、複数の政府部門に対して、違法行為があった芸能人のリストを渡したという。このリストには、趙薇のほかに、脱税とされた女優の范氷氷(ファン・ビンビン)、鄭爽(ジェン・シュアン)、8月に性的暴行の容疑で逮捕された元アイドルの呉亦凡(ウー・イーファン)の名前があった。

趙薇は20年前、日本の旭日旗の模様が入ったワンピースを着用したため、当局にやり玉に上げられた。今回、同氏を封じ込めたのは共産党内の権力闘争や当局によるアリババ集団への締め付けに関係するとみられる。趙氏は女優業のほかに、投資・金融業界にも頭角を現し、国内では「女性版バフェット」と呼ばれた。2014年、同氏はアリババ集団の映像制作子会社、阿里影業(アリババ・ピクチャーズ)に31億香港ドルを出資し、株式9.18%を取得したことで、同社の大株主となった。

粛清の原因

中国のエンタメ業界をよく知る映画プロデューサーの石宇歌氏はこのほど、大紀元の取材を受けた。同氏は、「中国芸能界には複雑な関係網がある」と話した。

石氏によると、中国ではほぼすべての芸能事務所の背後に太子党(高官の子弟)や大企業の創業者がいて、事務所のスポンサーやオーナーを務めているという。

「俳優が養成学校に在学中、事務所を設立するケースが多い。太子党や企業家はこの事務所の将来性を見込んで投資するのだ。太子党らにはもう1つの目的がある。これらの芸能事務所を通じて、不正に得た資金のマネーロンダリングを行うことだ」

石氏は江沢民政権の出来事を紹介した。当時、ある開国元帥の末裔である太子党が映画会社を設立しようとして、他の太子党メンバーから「風紀を乱す」などと非難された。この話は最高指導者の江沢民の耳にも入った。「紅二代、紅三代の皆さんが映画やテレビなどのメディアを支配した方がわれわれにとって有利なことだ」と江沢民が擁護したという。

「それ以降、北京の政界やビジネス界の大物らは皆、芸能事務所を持つようになった。芸能事務所やエンターテインメント会社を所有することは、これらの大物のステータスとなり、成功の証となった」

また、石氏は「以前北京にいた時、俳優養成学校の学生が設立した事務所が700~800社あり、その半分は太子党の出資を受けていると聞いた」と述べた。

同氏は、中国当局は、今回の芸能界への取り締まりを通じて、芸能人とその背後にいる太子党勢力を打倒する狙いがあると指摘した。

中国当局は2018年にも芸能界に対して締めつけを行った。当時の対象者は、党内江沢民派閥の曽慶紅氏とその弟の曽慶淮氏らだった。曽慶紅氏が03年、香港・マカオ政策を担当して以降、曽慶淮氏は文化部(省)駐香港特派員として、香港・マカオの芸能界を牛耳っていた。香港へ赴任する前の数年間は、曽慶淮氏は文化部の高官として、北京歌華有線網絡股份有限公司の設立や株式上場を主導した。

文革の再来

石宇歌氏は、中国当局は近年、有名な芸能人への抑圧をエスカレートしていると批判し、中国で文化大革命が再び起きているとの考えを示した。

「当局にとって、国民の人気を得ているアイドルや有名人が目障りだ。様々な方法で、彼たちの名声を壊し、業界から追放し、徹底的に打倒しようとしている。中国当局は締めつけを通して、芸能人に『いくら有名になっても、大きな影響力を持っていても、いとも簡単に消すことができる』と警告を発している。これはまさに国家テロリズムの表れだ」

いっぽう、大紀元コラムニストの王赫氏は、中国当局は格差解消のための「共同富裕」を実現するために芸能界を取り締まっているとの見方を示した。

王氏は、中国の芸能界自体に多くの問題があるとした。「例えば、当局は脱税行為の取締りを名目として、著名な俳優や富豪の資産を再分配することができる。このようなやり方なら国民の支持と理解を得やすいと当局は考えている」

(翻訳編集・張哲)