港に係留されているイギリス海軍空母「クイーンエリザベス」 (Photo by Kiyoshi Ota - Pool/Getty Images)

英空母が日本周辺で演習する最中…中国軍も渤海や海南島で軍事訓練

防衛省・自衛隊は、日本近海を含むインド太平洋地域で、8月から9月にかけて、多国籍からなる英空母クイーン・エリザベス打撃群とともに演習を継続して行っている。日本は、ルールに基づく海洋安全保障の価値を共有する国々とともに「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の実現を目指し、拡張主義を取る中国を牽制する。こうしたなか、中国軍は渤海海南島で軍事訓練を展開している。

防衛省・海上自衛隊は2日から7日にかけて、英海軍、米海軍、オランダ海軍、カナダ海軍と共同訓練「PACIFIC CROWN21」を実施すると発表した。海自の戦術技量の向上及び参加国海軍との連携の強化を図る。訓練内容は対抗戦、防空戦、対潜戦など。訓練海空域は、 東シナ海から四国南方、関東南方まで。

海自からは護衛艦「いせ」、「あさひ」、「はるさめ」、「たかなみ」、「きりしま」、「おおなみ」、 「てるづき」そして搭載航空機や潜水艦も加わる。空自からは航空機F-2、F-15、E-767が参加する。 空母打撃群として英空母「クイーン・エリザベス」、英駆逐艦「ディフェンダー」、米駆逐艦「ザ・サリバンズ」、蘭フリゲート艦「エファーツェン」、加フリゲート艦「ウィニペグ」、そして戦闘機F-35Bが米英海軍から参加する。

このほか、2日は日米訓練として海自護衛艦「たかなみ」と米海軍空母「カール・ヴィンソン」が、東シナ海で戦術訓練を行った。同日、海自補給艦「ときわ」から、米海軍駆逐艦「バリー」への補給訓練も行われた。

同時期に中国軍も訓練

いっぽう、中国も東南部沿岸で軍事訓練を展開している。河北省東部・秦皇島の海事安全局によると、9月6日から8日、午前8時から午後6時まで、渤海で軍事訓練を行う。このため、これらの入域禁止区域を設けた。また、西沙諸島に面する南部の島・海南島の海事局も、9日から10日まで実弾射撃訓練を行うと発表した。

5日には、中国空軍機19機が、台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入した。台湾国防部が発表した。それによると、侵入したのはJ‐16戦闘機10機、Su-30戦闘機4機、 H-6爆撃機4機、 対潜哨戒機1機。台湾は戦闘機を発進させ、ミサイルシステムを展開させた。

中国は、8月末の米グアムにおける日米豪印4カ国の訓練「マラバール」の際にも、同時期に南シナ海の広東省南部と、黄海渤海海峡付近で実弾射撃訓練を行っている。クワッドと呼ばれる戦略枠組みを組む4カ国の訓練では対地、対空、対潜水艦戦の演習が行われた。

サウスチャイナ・モーニングポストの取材に答えた中国軍の元大佐は、ここ数週間の演習は米国に対するメッセージであると見ている。「米国がイギリスやドイツなどの同盟国と航行の自由作戦を実施していることに対し、中国軍は反応を示している」と元大佐。「米国がその地域で存在感を強めれば、中国はそれに対抗して軍事力を誇示しなければならないだろう」。

米国および英仏独蘭、そしてEUは、東・南シナ海における力を背景にした中国共産党の拡張主義を受けて、2020年以降、インド太平洋における外交や安全保障政策を策定し、地域のコミットメントを示している。

欧州諸国の地域への関与で象徴的なのは英空母打撃群の日本寄港だ。9月6日、岸信夫防衛相は米海軍横須賀基地に寄港する英空母クイーン・エリザベスを視察。統合幕僚長の山崎幸二陸将、山村浩海上幕僚長も大臣の訪問に同行した。岸氏は、甲板に駐機されているF-35B戦闘機の間を歩き、スティーブ・ムーアハウス司令官から航空機の離陸についてなどの説明を受けた。

ムーアハウス司令官は、今回の日本訪問は、インド太平洋地域に対する英国のコミットメントを示す重要かつ象徴的なものであると述べた。 5月に英ポーツマス港を出港した空母打撃群は、南シナ海などの海域を通過して、9月4日に日本に到着した。地域のパトロール航行を経て、12月には欧州に帰港する。

(佐渡道世)