2011年6月、アフガニスタンからコロラド州フォートカーソンに到着した部隊の帰国歓迎式典で、兵士が国旗に敬礼している。参考写真(Photo by John Moore/Getty Images)
【エルドリッヂ氏独占インタビュー】

米軍のアフガン撤退は正しい判断だった 元米海兵隊関係者が語るその理由

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米軍アフガン撤退を巡っては、様々な意見と憶測が飛び交っている。米軍撤退後のアフガニスタンに中国共産党が触手を伸ばしているとの報道もあり、アジア情勢は依然として不安定さが目立っている。アフガン撤退は正しい選択だったのか、そして米国内部ではどのような問題が起きていたのか。安全保障問題に詳しいロバート・エルドリッヂ氏が語る。


アフガン撤退は正しい判断

ーーバイデン政権のアフガン撤退は、米国世論にどのような影響を与えたのか。

先日行われた世論調査によると、台湾を守る意見が過半数を超えていた。アフガン撤退は、米国が盟友を守る意思を放棄したことを意味するとの分析がある。しかし、私は全く賛同できない。

例えば、米国がアフガン駐留を続けていれば、戦費負担と国内世論の反発が強まり、結果的に中国に有利に働くといわれている。米軍のアフガンにおける戦費は日本円で110兆円規模だという説がある。バイデン大統領は390兆円だと言っていた。さらに、600~700兆円になるという計算もある。利息も付くので、今後のアメリカ人にとって大きな負担だ。米国がアフガンの泥沼にはまることで、国力を落とすことになるだけではなく、民間でも政府に対する不満が募るので、中国共産党はそれを嬉々として見ているだろう。そもそも出口のない作戦だった。

地理的にも、米軍がアフガンから中国を簡単に通常的に攻撃できるとは思えない。つまり中国にとって脅威とはなりえない。米国がアフガンの泥沼から抜けることで、米軍の再構築や、アメリカ国民と政府の信頼関係の再構築、財政の正常化を行うことが可能となる。今度はそのエネルギーを中国に向けることができる。米軍アフガン撤退は中国が喜ぶとの見方もできるが、私は逆の考えだ。確かにアフガンの資源を中国は入手するかもしれない。それを見越して米国はタリバンと交渉し、中国寄りにならないようにしていると推測される。

アメリカ国民は歴史から学ばないが、中国は歴史から学ぶ。アレクサンダー大王、イギリス、ソ連、アメリカはみなアフガンで失敗を喫したので、中国がアフガンの治安や統制のために軍隊をすぐ投じることは考えにくい。長い目で見れば、中国はアフガンを親中国家に仕立てようとするだろう。少なくとも資源や経済は徐々に中国に偏重する。だから私は(中国の文脈においても?)難題を抱えるアフガンからの撤退は悪い話ではないと思うし、むしろ米国が立ち直るチャンスだと捉えている。

カブールの空港で離陸準備をしているカタール航空の機体の横を通るタリバンの戦闘員たち(Photo by WAKIL KOHSAR/AFP via Getty Images) 

米国の方向転換

ーー米国はアフガンから撤退することで、中共に集中できるということか。

私はそう見ているし、そう思いたい。バイデン政権を支持しないが、アフガン撤退は正しい判断だと思う。現実的な問題として、20年戦って勝てない戦争は財政的にダメージが大きい。そのお金をほかの場所で使える。

そもそも戦争ではなかった。議会が戦争宣言すべきと米国憲法は決めているが、戦争宣言していない。議会は2001年の秋に武力行使を認めたが、それはビンラディンを追及するためだった。途中でビンラディンが逃亡して10年かかった。その間に、民主主義の国造りや平和構築など、介入の目的が変わってきた。違法とまでは言えないが、憲法が想定したものではなかった。第二次世界大戦後、議会はその権限をだんだんと行政府に移譲してきた。これは良くない傾向だ。

(聞き手・王文亮)


ロバート・D・エルドリッヂ

1968年米国ニュージャージー州生まれ。政治学博士。米リンチバーグ大学卒業後、神戸大学大学院で日米関係史を研究する。大阪大学大学院准教授(公共政策)を経て、在沖アメリカ海兵隊政治顧問としてトモダチ作戦の立案に携わる。著書は『沖縄問題の起源』(名古屋大学出版会、2003年)など多数。