中国・北京の天安門広場で開催された中国共産党結党100年記念式典に、胡錦濤前国家主席と並んで出席する習近平国家主席=2021年7月1日(Lintao Zhang/Getty Images)

「赤い貴族が中国の真の支配者」4年前失踪の女性富豪、元夫が暴露本を出版

赤い貴族」と呼ばれる中国共産党高官の子弟とビジネス界の癒着を描いた新書『Red Roulette: An Insider’s Story of Wealth, Power, Corruption, and Vengeance in Today’s China』(和訳:赤いルーレット:今日の中国における富と権力、腐敗と復讐の裏話)が9月7日、米国で出版された。

著者のデズモンド・シャム(Desmond Shum、沈棟)氏は幼少時代に香港に移民し、現在イギリスに在住している中国系ビジネスマン。2000年代初めから、実業家の元妻とともに10数年間にわたり、党幹部や赤い貴族の間で人脈を広げ、官商癒着を通じて巨額の利益を得ていた。4年前、元妻が突然、行方不明となった。高官の汚職事件に関わり、当局に拘束されたとみられる。

本の出版を控え、シャム氏が複数の外国メディアのインタビューを受けた。その直後、同氏のもとに元妻から電話があった。「人命に関わる」と本の出版を取りやめるよう同氏を説得していたという。

高官の失脚で元妻が失踪

シャム氏によると、元妻の段偉紅氏の主な人脈は、孫政才・元重慶市書記など、当時の中国で絶大な影響力と権力を持つ党幹部・官僚とその家族だった。元妻は、2000年代初頭に孫氏と知り合った。当時、孫氏は北京市順義区の党委員会書記を務めており、同区の不動産プロジェクトを元妻など懇意にしていた企業家に提供していたという。

これまでの報道では、孫政才氏の出世は、江沢民派と密接な関係があると言われている。江沢民派の長老である賈慶林・元全国政協主席、劉淇・元北京市党委書記、曾慶紅・元党中央組織部長らは、孫氏を中国共産党の次期指導者として目をかけていた。孫氏が失脚した後、習近平政権は孫氏がクーデターを企てていたと繰り返し示唆した。

2017年7月24日、孫氏は逮捕され、2018年に無期懲役の判決を受けた。 段偉紅氏は、孫氏の逮捕から6週間後の9月5日に失踪した。当局から正式な通知はないが、家族は孫氏の汚職に関与し、拘束された可能性が高いと考えている。段氏は今も起訴されておらず、所在も明かされていない。

シャム氏は回顧録の巻末に、本を書いた目的の一つは、中国当局に段氏の拘束について説明を求めることだったと書いている。本の中では、元妻はもう生きていないと推測している。

仮釈放された元妻からの「死の脅迫」

6日の米公共ラジオ局(NPR)のインタビューで、シャム氏は、同日朝、元妻から電話がかかってきたと述べた。

電話の中で段氏は最近、中国当局から一時的に「釈放」されたと説明した。シャム氏が海外メディアのインタビューに答えた後のことだ。シャム氏は、元妻が中国当局に強要され、回顧録の出版を延期または撤回させようとしていると考えている。

「この4年間、(中国)政府は、彼女を連れ去ったことも、彼女が罪を犯したことも公表していない。電話で彼女に何の罪を犯したのかと尋ねたが、それは秘密で、公表できないと彼女は答えた」とシャム氏は語った。

赤い貴族こそ、中国の支配者

シャム氏は4日、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)や米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで、中国を本当に支配しているのは「赤い貴族」だと述べた。中国の企業家は、赤い貴族のために働く「労働者階級」にすぎないと主張した。

シャム氏によると、鄧小平元総書記が1978年に改革開放路線を打ち出したのは、民営企業を信用したのではなく、当時の中国共産党政権がすでに破綻していたからである。共産党の支配力を緩め、私有財産や企業家の活動を認めなければならなかった。経済の発展とともに、党は徐々に「支配的な地位」を取り戻し、民営経済を認める姿勢は「一時的な戦術」に過ぎなかったという。

中国当局が最近提唱している「共同富裕(共に豊かになる)」政策について、シャム氏は、民間企業への締め付けは共産党による社会統制の一環だとの見方を示した。経済発展や海外投資に民間企業の協力が必要なくなれば、民間企業は「党の敵」に仕立てられるという。

シャム氏は、中国ネット通販大手・アリババ集団の創業者である馬雲(ジャック・マー)氏のような大物実業家は、「実物資産を持たず、資産のほとんどが赤い資本に支えられている」と明かした。「彼らは共産党にとって使い捨ての駒のような存在だ」

段偉紅氏は天津市出身で、泰鴻投資グループの創設者、凱風公益財団の創立者兼会長、中華全国青年連合会常務委員と清華大学戦略発展顧問委員会委員などを務めた。

上海で生まれ、香港で育ったデズモンド・シャム氏は、プライベート・エクイティに従事していた。1997年に北京に移住し、その4年後に段氏と出会い、北京空港の貨物ターミナルやブルガリホテル北京などの建築プロジェクトを共に手がけてきた。

赤い貴族との付き合いに危険を感じたシャム氏は中国を離れる決意をした。段氏が中国でのビジネスチャンスを捨てたくないため、2人は2015年に離婚した。シャム氏は現在、息子と一緒に英国で暮らしている。

(翻訳編集・王君宜)